こどもの心とからだシリーズ


やくそく

「指切り拳万うそついたら針千本飲〜ます」子どもは約束事が好きだ。ところが、 子どもといい加減な約束をする親が多い。親にとってこどもとの約束は 何千という日常生活の中の一つに過ぎないが、子どもにしてみれば世間も狭く、 全生活の十分の一くらいを約束が占めるので、裏切られると全身で傷ついてしまう。 なぜ約束を守らないのかと子どもが暴れだすと、親は怒って黙らせようとしたり 次の約束で何かとごまかそうとしたりする。
 子どもは泣き寝入りし、そのうち忘れてしまうが、お父さんやお母さんは約束を 守らない人だというイメージを子どもの心に残すことになり、後々の教育上大変に よろしくない。


好き嫌い

小学校で好きな食べ物は?と尋ねると、「はい、カレーライス」「ハンバーグ」「ラーメン」という返事が多いという。 どれもインスタント食品があり、家庭で手軽につくれるものばかり。これに対し、子どもの嫌いなものは第一位が ピーマン、ニンジン、魚、シイタケ、ナス、ネギ、タマネギと栄養豊富なものが続く。
 テーブルに料理をたくさん並べて、子どもたちに自分の好きなものを勝手に食べさせ観察をした人がいた。 バナナしか食べない子も、そのうち飽きて次のものを食べ始めるので、長期的視野でみると、 栄養のバランスはしっかりとれていた。子どもの偏食はあまり気にしなくてよさそうだ。だが、大人になっても ピーマン嫌いの人があり、困ってしまう。


血管

 今頃のこどものからだの中で、最も鍛錬不足の器官は血管かもしれない。
 血管は暑くなると太くなり、寒くなると細くなり、心臓の動きに応じて脈動し、収 縮連動をしながら、自らを鍛えている。
 そして全身に酸素と栄養分いっぱいの血液を運んでいる。
 エアコンが発達し、行き渡り、家庭でもいつも快適な温度で、長時間メディアにあ そび、気がつけばこどもの血管は怠けきっている。 しかも栄養過多になり、肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病、肝炎のこどもが増えてき た。
 そしてこの子たちは、血管から老衰するのではないかと心配されている。


熱のはな

 こどもは熱をだすと、よく発疹を伴う。からだの発疹を「熱のはな」 というのではなくて、「熱のはな」は風邪のはな、熱のふきだしともい われ、単純疱疹(単純ヘルペス)のことで、口唇ヘルペスとも言い、口 の周りや鼻などに、小さな水疱ができて、ムズ痒く、ピリピリ痛む疾患 で、全身症状はほとんどなでない。
 風邪などの病気や、海水浴やスキーなどの紫外線のストレスが誘因に なり易い。
 再発し易いのが特徴だが、放っておいても水疱がかさぶたになり、二 週間ほどで自然に治る。しかし現在では、特効的な抗ヘルペス剤があり、 早期に治療できるようになった。


あせも

夏、こどもたちにとって一番の問題は「あせも」であり、汗疹と書き、 あせぼ、汗瘡ともいう。 汗は汗腺というところで作られる。皮膚の汚れなどで汗腺(毛穴とは ちがう)の開口部が塞がれると、汗が詰まって皮膚に炎症を起こし、 あせもができる。
 あせも対策は汗の処理をこまめに行うことが大切だ。皮膚にとって 汗は異物であり、乾燥すると、塩分などが残る。その前にシャワーを 浴びるとか、濡れタオルで拭き取って、汗の脂や塩分を取り除くこと が大切だ。 衣類も着替え、汗の吸収のよい肌着で涼しく清潔にし、酸化亜鉛を中 心にクリーム、ローションも時には使用し、エアコンは28℃くらい に設定し、快適に猛暑を乗り切ろう。


てるてる坊主

てるてる坊主の恋しい季節になった。テレビやイン ターネットで、天気予報も即座にキャッチできる時代 になり、下駄の表裏で天気を占ったり、てるてる坊主 に晴れを祈るこどもの姿をみかけることが少なくなっ た。
てるてる坊主 てる坊主 あした 天気にしておくれ いつかの夢の 空のように 晴れたら 金の鈴あげよ 浅原六朗作詞中山晋平作曲 二番に長野県の方言が入ったこの曲も作者の風情が偲 ばれる。
てるてる坊主は男の子と思っていたが、実は女の子、 てるてる坊主の元は、中国の掃晴娘(サオチンニャン) 人形だといわれる。赤と緑の着物を着せて、箒を持た せ、軒に吊して晴れを祈ったのが日本に伝わったもの。 平安時代の本にも書かれているそうで、ずいぶん昔に 伝わったようで、「てれてれ坊主」とか「てりてり法師」 ともいわれていた。
こどもの心を育む上にも、伝えつづけたい風習だ。


おむつ考

 アフリカの田舎では赤ちゃんを背中の袋に入れ て、炊事、洗濯をしている母親の姿をみかける。こ れでは袋の中は赤ちゃんの排泄物ですぐに汚れて しまう、と心配してしまうが、アフリカの母親た ちは事前に赤ちゃんの気配で察知できる、という。 しかも生後一週を過ぎても、赤ちゃんのお尻を汚 すようでは、母親として失格だという烙印を押 されてしまう。
 赤ちゃんが排泄すれば、おしめを洗えばいい。全 自動洗濯機なら、いとも簡単なことだ。紙おむつ が大普及し、便利すぎる社会では子育てに関する 本能的な所作は退化してしまうのか。こどもの 泣き声で、おむつが汚れているのか、お腹が減って いるのか、気分が悪いのか、判別すらできない母親が 増えたといわれる。勿論、父親や家族の協力は欠 かせない。


お「袋」の味

 人の味覚は幼少時に食べたものが「食体験」 として残る。芋の煮っ転がしや、漬け物を幼 少時から食べている人は、それが「おふくろ の味」として残る。
 カレーやハンバーグばかり食べた人は、そ れが「おふくろの味」として残ることになる。 インスタント食品という袋ものを食べつづけ ていると、これがお「袋」味になるでしょう。 それを見込んだあるハンバーガー会社は、人 の味覚が決まる幼少時にケチャップとマスタ ードに漬け込み、この不況時にも、増収、増 益をあげている。
 味噌、醤油の味は忘れ去られ、ごはんを中 心とした和食から遠ざかっている。
 「おふくろの味」を取り戻そう。


にらめっこ

 目を見てあいさつの出来る子が少なくなったよ うだ。目は口ほどにものを言う。目と目を見交わ す。というように、目は言葉異常に真実を語る。 「目を見てあいさつ」「目を見て握手」をするこ とは、人間関係を保つうえで大切だ。
 「だるまさん、だるまさん、にらめっこしまし ょ、笑うと負けよ、あっぷっぷー」
 子どもの頃のにらめっこ遊びの起源は、人と会 う緊張をほぐすための練習だとも言われている。
 職場や家庭でぜひ「にらめっこ」をはやらせよ う。
 目を見てあいさつ、目を見てニッコリがまわり を明るくする。


頭の良し悪し

 乳幼児は無限の可能性を秘めている。頭の 良し悪しは生まれつきではない。みんな同じ 能力を持っている。生まれた時は右脳(正確 には間脳の右半分)しか働いていないからだ、 と言われている。
 左脳はほぼ三歳になり、右脳から橋がかか る(脳梁)。そして左脳のエネルギー回路が 全開する。
 要するにここまでは、人間誰もが同じで、四 歳以後にどんなことを教えるかにより、頭の 良し悪しが決まる。
 子どものからだの中でも脳の発育は最も早 く、四歳で大人の八十%の発育が確認されて いる。
 最近こどものマスメディア漬けが問題にな っているが、テレビやゲームをする時間が三 〜四時間になると、β波が低下し、右脳の活 動機能が落ちるといわれ、その習慣が長期間 続くと、左脳の働きまで悪化し、脳の発育不 全を起こすことになる。外での遊びや話題を大 切にしよう。


おんぶと抱っこ

ベビーカーなどが普及した影響か、街中で おんぶや抱っこをしているお父さんお母さん の姿が少なくなった。
おんぶや抱っこは赤ちゃんを「運ぶ」だけ でなく、スキンシップを保つ上で大切な行動 といえる。
まず、おんぶの良さは赤ちゃんと触れ合い ながら、家事もできるし、歩きやすく腰への 負担も少なく、寝かしつけるのに便利だとい うこと。
格好が悪いなどといわず、忙しいお母さん には是非有効に活用してほしい。抱っこは赤 ちゃんの頚がすわる前から可能で、早くから スキンシップがとれ、子どものぬくもりを感 じ取ることが出来る。目と目を合わせ、コミ ュニケーションがとれる。「重い」「疲れる」 といったマイナスイメージは払拭して、スキ ンシップを楽しみ、抱っこをプラスイメージ でとらえ直そう。


重心が高い

 幼いこどもは四等身だ。歩き始めたこどもが、よく転ぶのは、頭 が身体の平衡を保つのに必要な神経の働きが不充分なため、 と考えられてきた。
 しかし、人間は重心の高い動物であり、こどもの重心は大人より 高いことも原因になっている。ある運動額の教科書には「人体の重 心は骨盤内で仙骨のやや上方にあり、こどもでは相対的に高位にあ るために、立位姿勢の保持が不安定となる」と記されている。  こどもの重心はおへそのやや上にあり、年齢とともに重心の位置 は下にさがって、大人ではおへそと恥骨結合の中間くらいの高さに なる。
 私などもお正月、たこあげや竹馬遊びの記憶があるが、考えてみ ると、竹馬は足を乗せる位置が高いほど、つまり重心の位置が高い ほど、安定を保つことが難しくなる。あらゆるスポーツで、重心を 意識することは大切であり、こどもが転びやすいのも、重心が関係 していることは確かである。

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