こどもの心とからだシリーズ


黒舌・地図舌・苺舌

見た目にもこどもの舌はきれい。 黒舌は母乳以外に何も与えていない赤ちゃんにもみられることがある。 となると、色のついた食べ物の影響とは考えられない。 調べてみると、ペニシリンや蒼鉛剤(整腸)の服用で舌が黒ずむことが判った。 地図舌は舌の表面の一部に円形または半円形の舌苔の剥脱した部分が現れ、 その部分が赤く、周辺は白い舌苔で覆われ、全体として地図のように見える。
 乳幼児に多く、原因として滲出性体質の子どもに多く風邪などをひき易い子に 多いといわれる。
 苺舌は抗生物質などを多く服用し、ビタミンB2が不足すると、 舌全体が赤くなり、舌苔がなくブツブツが出来、苺のようになる。 溶連菌感染症でも特徴的に苺舌がみられる。その他、乾燥舌は脱水状態を表す。 舌にもいろいろと表情がある。


自然体

こどもは自然体だ。余分な緊張、ストレスはない。 脳神経の発達は、成人を100とし、三歳で80%近 い発達がみられる。身体の発達が30%だから、飛躍 的な発達を示している。従って吸収力も好奇心も旺盛 だ。スポーツに限らず、音楽、読書、いろいろな遊び にも自然体で着手出来、吸収出来る。ピアノでも両手 で、すぐに弾けるようになる。
成人してからでは追いつけない面が多々ある。眼の前 で無心に鼻くそをほじっているこどもをみながら、 こどもの自然体は大人の暖かな理解のもとに、のびの びと伸ばしてやりたいものだと、つくづく思う。


アドボカシー

手をこまねいているだけでは社会は良くならない。 少子化も改善されない。アドボカシー(advocacy)は、 まだ聞きなれない言葉だが、「ある考えや主張を自分の ためにうまく言い出せない人(こども)たちのために、 別の人(大人)が声を大にして、外部に伝える行為」 と解釈すると判りやすい。
天然痘やポリオを予防根絶し、摩疹をなくそうと予 防に力を入れているのも、アドボカシーの医療モデル と見なすことができる。
子育て支援活動、いろいろなNPO活動もアドボカ シーとみられる。
実践の場は(1)身近な活動、(2)地域での活動、(3)国レ ベルの活動といった三つのレベルがある。これまで解決 されなかったこどもの問題を「アドボカシー」の観点 からとらえて見ると、新しいアプローチの方法が見つ かるかも知れない。
アドボカシーの報酬は感動である。こども達のため に実践が最も大切である。


タバコ誤飲

「タバコを食べたーっ」と、子どもを抱いて医院に飛び 込んでくることは少なくなったように思える。電話で 判断を請われたりした場合うろたえる事がある。
ヒトの急性中毒に関する日本中毒情報センターの昨 年の統計によると、中毒101番、5歳未満の受信件 数3万の15%・4500がタバコ関連の受信であっ た。さらなる禁煙運動が必要だ。
タバコ誤飲で胃洗浄を要するのは@タバコが水に浸 った浸出液を誤飲した場合、A2センチ以上のタバコを 食べた場合、B何らかの症状がある場合、症状発現時 間は軽症では誤飲後30分前後で腹痛、嘔吐、顔面蒼 白、脱力などが見られ、重傷では誤飲後の直後から痙 攣、呼吸障害、意識障害などが見られる。24時間 経過後も無症状なら中毒の心配はない。

■タバコ専用応答電話(テープ)
06-6875-5199
■中毒110番
0990-50-2499


汗っかき

赤ちゃんは大人のなんと三倍も汗っかき。汗にはナトリ ウムイオンやカルシウムイオンが含まれ、たくさん汗を かくと知らず知らすのうちに体液イオンも失われている。
 腎臓が体液のイオンバランスを整える重要な働き者。 ところが赤ちゃんの腎臓の機能はまだまだ未熟。不要物 を濾過し、排泄するのに大人の3、5倍の水分が必要だ。 赤ちゃんは「水分がほしい」と言葉で要求できない。
 親が気をつけて不足を補わないと、脱水にしてしまう。 脱水を補うための経口イオン飲料が次々と出回っている が、大人用は糖分が多い上に赤ちゃんの体液より浸透圧 が高く身体に負担がかかる。
 乳幼児用は吸収されやすく飲みやすく、汗をたくさん かいた時の水分補給に少量ずつなら差し支えない。
 ふだんから汗っかきの赤ちゃんが一層汗をかく夏は、 イオンバランスもくずれ易いので要注意。


いびき

 肥満児の増えている昨今、いびきは子どもでもまれで はない。「よく寝る子だね」などと、のんきな対応をし ている場合ではない。
 いびきには必ず原因があり、思わぬ障害をもたらす ことがある。元来、軽視されがちで、見過ごされやす い子どものいびきや睡眠時無呼吸も、ほうっておくと さまざまな弊害をもたす。
 無呼吸の時はもちろん、いびきが極端にひどい場合 も閉塞性の呼吸障害があるので、夜間の体への酸素の 取り込みが少なく、大人と同じように、頭痛や眠気な どの症状がみられたり、集中力の欠如や学習能力の低 下の原因にもなる。対策は肥満があれば、その指導、 軽度ないびきであれば睡眠時の体位の指導、たとえば 枕を低くしたり、横向きに寝るだけで改善が期待でき ることもある。
 子どもの無呼吸の原因には扁桃腺肥大があり、早め の専門医との相談が必要だ。


尖兵ポリープ

聞きなれない病名だが、まれに赤ちゃんの会陰 部みられるポリープだ。
肛門(皮膚)と直腸(粘膜)の境界部が何らかの 原因で離断され、五ミリほど皮膚が肛門の外側に 向かって反転した状態である。
排便時に痛みを伴ったり、便に血液が付着した りすることもある。別名「見張りいぼ」ともいわ れ、硬便、便秘が誘因になる。
多くは時間の経過とともに内面が皮膚により覆 われるため、単に肛門のシワが飛び出した形の異 常のみとなる。
なぜか女児に多く、十二時の部位に好発する。
症状がなければ放置してよい。ほとんどの場合、 このポリープは消失してしまう。


ほうけい

陰茎(ペニス)の先端の亀頭を包皮がおおって いる状態を包茎という。
むかしは成人だけの問題であったが、近年は育 児相談で赤ちゃんの包茎を心配するお母さんに会 うようになった。亀頭と包皮の間に恥垢(かす) がたまることが一つの問題になっており、陰茎癌 になるのでは、と心配されているが、恥垢に発癌 性はないとされている。
乳幼児の包茎を調査してみると、用手で包皮が 反転できず、亀頭が見えない真性包茎が、一〜三 ヶ月乳児で、90%にみられ、一歳頃には60%、 三歳では35%と自然に減っている。
小学生では7%、中・高生では2%ということ だ。
要するに、赤ちゃんの時は亀頭と包皮が癒着し ており大部分が包茎であり、無理にはがすと出血 する。
従って排尿障害など、特別な症状がなければ、 そのまま高学年になるまで経過をみていれば良い。


ダダっ子

こどもは二、三歳になると、自我が芽生え始め る。欲しいものを手にいれようとする行動も目立っ てくる。手にいれることが出来るまで、駄々をこ ねる。
 この時期のこどもは他人も自分と同じような気 持ちがある、といったことはわからない。そこで、 なんでも自分の要求を通そうと、駄々をこねる。
 四歳を過ぎるころから、他人の気持ちが読めるよ うになり、五歳くらいでその能力(心の理論)が 完成する。
 他人にそうした要求があることを、言葉で説明 することによって、納得させることが可能になり、 反抗期から抜け出すことになる。


チック

瞬間的に肩をすくめたり目をつむったり、舌打 ちや咳ばらいなどの動作がくり返される病気で、 チックと名付けられているが、一種のくせと考え られる。
このチックという病気は幼児期〜学齢期にかけ ての年齢層に見られることの多い異常で、大抵は 数ヶ月〜一年くらいで治っていく。原因は性格的 に情緒的未熟、神経質、まじめ過ぎる、などで、 両親の養育態度上の問題として、完全欲、支配的、 干渉、矛盾が多い。などが認められている。
しかし、このようなチックの中に脳のアミンと 呼ばれる物質の代謝異常によって起こる治りにく い病型もあり、注目されている。
自分の体を傷つけるくせの中にもプリン代謝 異常と結びつくものもあるので、小児科医の診察 を受けるのが得策だ。


目線

生後半年すぎから一歳くらいの乳児は、しばし ば人見知りをする。初めての人に見られた時、口 をへの字に曲げ、泣いてお母さんにしがみつく。 これはいつも見慣れている人と、それ以外の人と を区別できるようになった証拠。見知らぬ人に対 する恐れと解釈される。
しかし目線が合わなければ赤ちゃんは相手の存 在をそれほど意識しない。だから赤ちゃんに初めて 会った時は、いきなり赤ちゃんの目を見ないのが、 泣かれないコツだ。お正月赤ちゃんに泣かれない ためには、先ずお母さんと対話するなど、目線を 赤ちゃん以外からアプローチするのが良い。


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