こどもの心とからだシリーズ


つむじ

 くりくり頭の子どもを見かけることが少なくな った。つむじ(旋毛)は頭頂部にある毛が集中し て放散性の渦状になっている部分の俗称で、診察 上問題にすることは、めったにない。
 日本人のつむじの数については、単一つむじが 93%、2つが6.7%で、巻き方では右巻き が63%、左巻きが31%であった。つむじ の数や巻き方に遺伝が関与しているとし、研究も なされている。
 つむじと成長・発達の関係では、左巻きと右巻 きで差があるとか、つむじが2つあるのは知恵づ きが遅れるなどといった心配をされる親もあるが、 重複つむじの知恵遅れより、重複つむじの正常児 の方がはるかに多数であり、いちいち心配するの は取り越し苦労といえる。


あかんべー

「やーだよ、あかんべー」と子供の頃、よくやった のを覚えている。
あかんべーが否定・拒絶をすめすのは万国共通のよう だが、これはそもそも乳児の動作からきている。
乳児は、お腹がいっぱいになると、オッパイの乳首や 哺乳瓶の吸い口を、舌で押しだす。食べ物ののったス プーンなどにも、同じ動作をしめす。あかんべーはこ こから生まれた。
されに、舌で押し出した後顔を横に振る。これが否定 のサインになったのも、子どものこの動作からきてい る。
子供にとってあかんべーは、ただ変な顔、面白い顔 の延長かな、嫌いの意味の「あかんべー」は出来る だけしないように教えよう。

子猫のノンタンの絵本、
「あかんベノンタン」
キヨノサチコ作・絵 偕成社
も読み聞かせてあげよう。


げっぷとおなら

ぞうのおならはおおきいぞ、「ぶおおーん」、こ どももおならがでる。ものをたべたときにくちか らくうきがはいる。それがこうもんからでるとき におならになる。
これは子どもたちが大喜びの絵本のお話。
   「おなら」長新太(作) 福音館書店
口から食べたものは、胃や腸を回り、大腸では 腸内細菌の働きでガスを産生する。口から入った 空気とともにおならのもとになっている。肛門か ら出たおならはひどい臭気を発するが、口から出 たげっぷに臭気はない。一つの管でつながってい る腸管でありながら、臭気に差があるのはなぜか。
それは小腸と大腸の間には回盲弁というのがあ って、おならの臭気の逆行を防いでいるからで、 もしこの弁がなければ、自分がげっぷをするたび に鼻をつまんでいなければならず、考えただけで もぞぅーっとしますね。


トローチの穴

子どもが風邪をひくと、「トローチちょうだい」と 催促されることが時々ある。近頃のトローチの新製品は 市中薬局にそろっていて、口中薬としてのトローチだ けでも、16種以上あり、他に嫌煙トローチ、シェープ アップトローチなどもある。なめて効くトローチ、その 使い易さから普及がめざましいようだ。そして殆どの トローチで見られるのだが、やや大きめの錠剤の真ん中 に、ドーナツのように穴が開いている。実はこの穴に はちゃんとした意味がある。
かつて、穴なしトローチの時代に子どもたちがなめて いて、誤って飲み込んでしまい、気管支にひっかかっ て窒息するという事件が多発した。そこで真ん中に空 気が通る穴をつけ、窒息事故は激減したそうだ。
ちなみに、トローチとはギリシャ語のトロコスが語源 で、小車輪を意味する。


病児の入浴

病院の子供を入浴させてよいかどうか、よく聞かれる。常 識的に、熱い湯に入った場合、体温の上昇と新陳代謝の亢進が おこる。
脈拍数は38℃〜40℃のぬるい湯では減少し41℃〜42℃の熱い 湯では逆に増加する。血圧はぬるい湯では収縮期(最高)血圧、 拡張期(最低)血圧ともに降下するが熱い湯では、収縮期血圧 が上昇する。
また、入浴は呼吸の深さを増すが、長湯では呼吸数が増え、 浅い呼吸になる。消火器では腸の動きが少なくなり、痛みを軽 くする。筋肉に対しては、拡張をほぐし、痛みを取る作用がある。
以上のことから、病児の入浴を考えると、熱の高い子どもは 入浴を差し控えた方がよい。それは体温が上昇し、新陳代謝も 亢進し、体力の消耗をより大きくすることになる。
「せきがでるが熱はない」というような子どもの入浴は差し 支えない。腹痛や下痢の場合は、体力の消耗が甚だしくなければ 入浴してもよい。アトピー性皮膚炎では、皮膚に石鹸をつけ、 よく洗い、後をシャンプーできれいに流しておくのが、より効果 的だといわれている。


タンコブ

タンコブをつくっているこどもを見かけることも、最近は少 なくなった。
タンコブはどのようにしてできる?皮膚のすぐ下にある毛細 血管が外から打撃を受けると、つぶされて、裂け目ができるが、 その裂け目は、とても小さいので赤血球など血液の中でも形を 持ったものは、そこでひっかかり外へは出れないが、血漿の ような液体だけが流出し、そこで細胞が水びたし状態になりふ くれあがる。
これがコブで、頭やむこうずねなど、下に硬い骨があると、 この腫れがよくわかる。筋肉や脂肪の多いところでは目立たな いが、同じことが起こっている。
もっとひどくなり、毛細血管が破れると、赤血球も出てくる ので、コブに赤い色がつき、これを放っておくと、液体がそこ にある神経細胞を圧迫して痛みを感じる。コブはふくれていく 時が痛い。


えくぼ

幼いこどものほっぺはみずみずしく、えくぼをみることはまれである。
 頬はたくさんの筋肉でできている。 そのうち、口のまわりにある筋肉が縮んで、皮下脂肪が通常より少ないときにえくぼ はできる。
 親にえくぼがあると、その子にあらわれやすいが、親にえくぼがなくても、十人に 一人ぐらいは、 えくぼのできる子が産まれる。
 えくぼというと、とかく可愛らしい女性のえくぼを連想しがちだが、 実際には頻度的にも男女差はない。
 えくぼのある人の六割が両側にでき、四割が片側にできると報告されている。
 中国ではえくぼのある花嫁は幸運をもたらすという言い伝えがあり、 えくぼを作る手術を求める女性が多い。
 逆にえくぼをとる人もあるが、自然体が良い。
 えくぼはこどもにも大人にもチャーミングポイントだ。


過剰泣き

こどもの過剰泣きに対しては、いろいろな呼び 名がある。「コリック」もしくは「三ヶ月疝痛」 は生後六週から三ヶ月の間にみられる乳児の激し い泣きのことで、インファントコリックともいわ れる。欧米三人に一人がコリックを経験する といわれ、育児ストレスの大きな原因になってい る。
泣き始めが発作的、衝動的であるものは「発作 的泣きさわぎ」または「衝動泣き」と呼ばれ、長時 間泣き続ける場合は、狭い意味で「過剰泣き」と 呼ばれたり、単に「長泣き」ということもある。
また一日に何回も繰り返して泣く時は「イライ ラ泣き」と呼ばれ、それが夜中に限られている場 合は「夜泣き」である。
過剰泣きの原因は、消化管アレルギー説、心理説、 栄養法との関係も研究されたが、不明である。 母親の心理状態や育児支援体制がこどもの過剰泣 きと、密接な関係があるようだ。


ノーテレビデー

こどもをテレビ漬けにしないで−。市民団体や医師らがこんな呼 びかけを始めている。放送連盟の調査によると、こどもの平日一日 あたりのテレビ視聴時間は五時間以上十二.五%、二時間以上は八 十.八%で、ほとんど視ないない家庭は一.三%であった。好奇心の強 いこどもほど、テレビ・ビデオの視聴時間が長い。テレビを見せてお く方がこどもが静かになっていい、といった安易な生活習慣も考えて みる必要がある。
アニメを一日七時間以上も繰り返し視ていた子で、名前を呼んで も返事せず、親とも視線を合わさず、聞きなれない独り言を言った り暴れたりする子になっていたが、環境を改善し、一年後には治った こどもがいる。文部科学省の調査によると、親にテレビの視過ぎと 注意された子は、父からは十三%、母からは二十二%で、米、英、ド イツ、韓国と比べ最も低く、わが国の親の無頓着さが指摘されている。
すでにアメリカでは十年前から、ノーテレビ運動が盛んで「ノーテ レビウィーク」が毎年四月に実施されている。対話の大事な二〜三 歳までのテレビは控えよう。


歯ぎしり

こどもの歯ぎしりはまだ歯の生えそろってない 十ヶ月の乳児でも起こる。
歯ぎしりをするのは、十人に一人ともいわれる が、もっと多いという意見もある。やはり 睡眠中に起こることが多いが、研究によると、眠 り込んで間もなくの比較的浅い眠りの時期に起こ りやすい。
多い人で一晩百五十六回、少ない人で二十四回 程度であった。
近年は食生活の変化により、柔らかな食品も多 く、顎骨の未発達な人が増え、歯ぎしりが原因で 顎関節症になる人もある。こどもの歯ぎしりの原因 はまだ解明されていないが、習癖説、遺伝説など がある。
乳歯でも歯の表面は比較的硬いので、歯ぎしり ぐらいで磨り減る心配はないし、少なくとも永久 歯に影響はない。ナイトガードにマウスピースも まだ要らない。


しもやけ

かつて冬の子ども達を悩ませたしもやけ、暖房 が充実し、温水器が普及するとともに、外で遊ぶ 子どもが少なくなり、北海道でもしもやけで病院 に来る子どもが、とても少なくなったそうだ。乳 幼児では手足だけでなく、顔の頬、鼻先、耳たぶに もしもやけをみる。しもやけは「凍瘡」とも呼ば れ、寒さが第一の原因だが、寒さだけでは発症せ ず、実は湿気が引き金になる。
手のぬれる遊びのあとは必ず湿気を拭き取るこ とが大切だ。しもやけはかゆみもつよく、かゆみ 止めや抗炎症剤を中心とした塗り薬を使うのが一 般的だ。
ビタミンEの内服も血行を促進し、効果的だ。
冷たくなった子どもの手足を、よくマッサー ジしてやり、外出時には保温に気をつけよう。


こどもの夢

夢のメカニズムについては、眠っている乳児の 瞼の下で、眼球が急速に動く時期があり、これが 一定の間隔で繰り返されることがわかり、レム睡 眠と呼ばれ、この時期に夢を見ていることが多い ことが分かった。
では、こどもはいつ頃夢を見るのだろうか。 赤ちゃんでも眠りながら微笑したり、乳を吸うよ うに口を動かしたりする場合があり、もう少し大 きくなると眠りながら泣いたり、声をたてて笑っ たりすることもある。
夢の内容を聞き出すことができるのは二歳頃か らで、こどもの夢の内容では人間と動物が最も多 く現れる。そして恐ろしい夢や不快な夢が多いの も、こどもの夢の特徴ともいわれ、こどもが明る い、より良い夢を多く見られる環境づくりの大切 さをつくづく感じさせられる。


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